ほんと初めはどうしようかと思ったぜ?
こんな奴がはじめの俺の主人だってよ。

どっからどう見ても、垢抜けねえ田舎もん。
妙におどおどしやがってよ。
大学進学のために上京だって聞いて納得いったけどさ。
心配したぜ、こいつにやってけるのかって。

そしたら案の定、ホームシック起こしてやんの。
俺にはわかんねぇよ。言葉の違いってそんなに堪えるもんかね?
なぁ、泣きながら実家に電話したり友達に愚痴ったりよ。
俺だったらはっきり言うよ。お前うぜぇ。
良かったな、周りが俺みたいじゃなく温厚な奴らばかりで。

けど、励まされて立ち直った後のお前は、ちょっと明るくなったよな。
多くはなかったが友達連れてきて喋ったりしてさ。
サークル立ち上げただの吹奏楽団入っただの。
野暮ったさは相変わらずだが、良かったな、て思ったさ。

頑張るときは頑張ってたしな。
就職活動中は疲れで歯茎腫れさせたまんま、机に向かって黙々と書類書いてたな。
それでもなかなか決まんなかったけど。
いくつ1次面接で負けたんだっけ。23連敗?
笑いこらえながら心配したっけな、そう言えば。
でも最後には半分夢叶えたし、あの時は素直に誉めてやろうかな、なんて考えた。

しかしお前、俺の扱い方、もうちょっとどうにかならなかったのかよ?
俺の顔に埃とかゴミとか溜めたまんまにしやがって。
新聞や雑誌も溜めたままなかなか捨てねぇから部屋はどんどん狭くなるしよ。
模様替えの1つもしねぇし。
俺の顔に変な型残しやがったらどうしてやろうか考えてたんだぜ。
ま、そんなことなかったから良かったけどな。
シミや汚れは山ほど作られたけどな……やっぱ殺す。

ま、いいか。
もうお前ともお別れみたいだしな。
次の奴は、俺より大きいんだって?そんで俺より安いんだってな。
イイ奴見つけたじゃねぇか。
次の奴にもしっかり守ってもらえよ。
もちろん、お前もしっかり守ってやるんだ。
俺みたいに愚痴ばかり言わすんじゃねぇぞ。

ん?…もう時間か。
お前、髪切る店は変えねえんだろ?
また、遠くからでも俺を見上げてやってくれ。
502だ。忘れるなよ。

それじゃな。
元気で。

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