祖父母は本当に働き者だったと思う。
国鉄職員だった祖父と、祖母は……何の会社だったかな。
定年まで勤め上げた2人は、生活するになんら不自由ないくらいの年金をもらってる。
なのに、去年までずっとアルバイトしていた。
昭和一桁生まれなのに。
そこまでしなくても、とずっと思っていたが、本人達はボケ防止とか笑ってた。

そうして稼いだお金の殆どって、たぶん僕ら兄弟の懐に消えている。
今日、顔を出したら、また僕に大金を渡そうとした。
「大丈夫だから」と辞退しようとしたが、断りきれずにポケットにねじ込まれる形になった。
兄もたまに帰省して顔を出せば、同じようにもらうらしい。

たぶん祖父母は、孫の幸せを願ってる。
戦前も戦争も高度成長も一通り体験した祖父母は、子供と孫には不自由させたくないようだ。

でも、そのお金、もっと他に使い道があるって、絶対。
じーさん、肩口に何かしこりがあるって?
火曜に検査結果出るって?
他にもちょくちょくと手術受けてなかったっけ?
足腰弱ってない?

ばーさん、血圧高くなって入院してたやん?この前。
今日も足が痛い足が痛い、って言いながら台所向かってったし。
相変わらずバイクで大伯母たちのところに遊びには行ってるみたいだけど。
もう畑も殆ど行ってないって?2年前には西瓜まで作ってくれてたのに。

僕に使う金あったら、医者行ってください。
整体行ってください。
美味しいもの食べたり、マッサージ椅子買ったり、自分の為に使ってください。

もっとずっと元気で、長生きしてください。
特にじーさん。
兄弟唯一の生き残りで、上の兄弟全員の年を追い越して弱気になってるけど、まだまだだと僕は思うから。
あとおかん、情報は後出しにすんな。
父方の祖父が事故に遭った時も、亡くなった時も、祖母が入院したときも、全部事後報告。
「遠くてすぐ来れんのに心配かけたくないから」ってその気遣いは無用。

あ、そうだ。
あの階段、本当に危ないから手摺つけて。
狭いし急だし、僕でも怖い。

香港旅行の土産の漢方。
ご丁寧にも「長寿丸」て名前のやつ。
何で東京に忘れてきたかなぁ。

いつもお金くれるのは助かるけど、実は、お金よりモノが欲しいんです。
見たら、じーさんばーさんを思い出せるような。
3歳くらいかな、もらったでべそのブルドッグのぬいぐるみ。
背中のスイッチ入れたら、話し掛けた言葉を鸚鵡返しするやつ。
まだあるよ。
薄汚れたけど、さすがに。
それと、高2の時にもらった茶色いマフラー。
これは無くしてしまったけど、高校のときは使ってなかったけど、大学で使ってて。
実はもらったときすごく嬉しくて、この2つ。

久しぶりに、書棚の上にいたブルドッグのスイッチを入れて話し掛けてみた。
かなりくぐもった小さい声で、短くしか返してくれなかった。
……お前も寿命が近いのか?
19年間、電池の入れ替えもしてないしな。

いや、まだまだ、だよな。

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