ISBN:4152084375 単行本 恩田 陸 早川書房 2002/11 ¥1,890

近所の啓文堂にて購入。
タイトルに興味を惹かれつつも先延ばしにしていた。
しかし、玲嬢(お気に入り参照)が「友達に借りて読んだ」と話していたのをきっかけに、読みたくなった。
帰省の新幹線を経て、3日で読了。

日本人だけが地球に残り、厳しい生活を強いられている近未来。
この世界でエリートになる近道は「大東京学園」の卒業総代になることだった。
過酷な入試を突破して入学したアキラとシゲルは、大東京学園の中身を知り愕然とする。
そして、学園からの脱走を謀る「新宿」クラスと接触したアキラは、学園更なる秘密を知り、外の世界を目指す。

序盤のころを読んで持った感想。
アホだ(笑)
どこかで聞いたような名前、イベント、その他諸々。
それをパロディのように意味を転化させて全く奇妙な世界を作り出している。
1つ1つに大きな破壊力はないけれど、じわじわとくる感じ。
実力試験や大東京オリンピックの競技・ルールもアホっぽくて、シリアスな展開で進むところでいきなり腰を折ってくれる。

けれど、物語が進むにつれて、作品ではなく、自分が生きている(生きていた)20世紀について考えさせられた。
82年生まれの僕が「20世紀を語る」というのもおこがましい話なのだが、抱えきれないほどの文化が生まれている時代を生きることができたのは、すごく幸せなことだったのではないだろうか。
今ある文化、僕が触れているのは僅かなものだが、それらを全部封印された世界なんて想像できない。

『バトル・ロワイアル』(高見広春・太田出版)を思い出すような展開。
狂っている教師や制度の中で、必死に自分たちの未来を掴もうとしている生徒たちの姿に引きこまれ、最後まで目が離せなかった。
「成仏する」という得体のしれないものにすがり、ただ走りつづけていく……。
少しずつ、少しずつ学園の謎が解けていきそれもまたページをめくる手を止めさせない。

人名が全部地名からきている、というのがなんとなく好き。
恩田さん、こういうのも書けるのか、と思ってますます好きになりそう。
ただ、この作品は好き嫌いは分かれるとは思う。
ラストも、しっくりきたんだけど。
お祖父さん、お祖母さん、あなたの孫は、これから……と考えるとやるせない。

読み終わってから、本の帯をなんとなくはずしてみたら、そこには。
とても悲しくなって、もう一度帯をかけなおした。

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