中学校2年の時、「1年後の自分に手紙を書こう」ということをやった。卒業の時に受け取った手紙には、高校に進む自分に対して無邪気な応援の言葉が書かれていた。まっすぐな字で、のびのびと。

長山西小6年3組を1975年に卒業した生徒は担任の薦めでタイムカプセルを埋めた。40歳になったら掘り起こすことになっていたのだが、学校の廃校に伴って、まだ39歳なのだが掘り起こすことになった。そうして夕刊の片隅に載ったタイムカプセル掘り起こしのお知らせを見て集まった2001年7月20日、午後3時7分23秒。全ての物語は始まった。

リストラ、離婚の危機、難病、落ちて行く自分……。登場人物は「こんなはずじゃなかった」と思う。当たり前だ。幼い頃には、自分が不幸な目に遭うなんて全く信じないで生きていた。私だって12歳の時には東京の大学で将来の夢のために頑張って勉強するようになるなんて思っていなかったし、14歳の自分だって、15歳の自分が進路について親・教師と対立するようになるなんて思っても見なかった。1年後のことさえ、わからなかった。

もし私が今タイムカプセルを埋めるなら、何を中に入れるだろうか。今の私が未来の私に伝えたいことは一体何なのだろう。39歳の私はそれを見て、どんなことを思うのだろう。

そして、この本が最後まで一貫して問いかけてくる命題、「あなたは今、幸せですかーー」これに、満面の笑みで「はい、幸せです」と言えるように、私は今、頑張っているのだ。

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重松清『トワイライト』文藝春秋、2002

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