山田宗樹著「嫌われ松子の一生」
2003年2月6日53年間の彼女の人生。
欲しかったものはただ1つ、愛だった。
小さい頃から重病の妹に両親の愛情を奪われ、両親に目にかけてもらいたくて自分の望みを抑制し、親の望む道を歩んできた。そのようにして得た教師という地位は、自分のクラスの生徒が犯した罪を隠匿しようとしたがために追われることになり、ムラ社会的な地元を飛び出す。
その後、ひょんなことから色々な男性達と深い仲になるが、松子は決して浮気はせず、相手の愛を得るために躍起になる。それは「殴られても平気だ」と言って憚らないところから見ると、依存的なものだったと言っていいだろう。自分が刑務所に入ったときも、恋人が刑務所に入っているときも、松子は「任期を終えた後から始まる幸せな生活」を夢見て耐えてきた。どの相手と過ごしてきたときも、精一杯の愛情を注ぎ、自分も愛の言葉を受けてきた。だからこそ、別れが来た時の松子のショックの大きさは計り知れない。
彼女の人生は、全てが裏目に出てしまう人生だった。信じていた者に裏切られ、死なれ、見捨てられて。53になって刑務所仲間の誘いを受け、廃人のような生活をしていた松子はまた立ち上がろうとしていたがその志半ばで倒れることになってしまった。できれば、もっと幸せな夢を見させてあげたかった。殺されるなんて人生の終わり方、彼女には可哀相すぎる。
彼女の生き方は誉められたものでは決してない。だが、彼女の生き方を「間違っていた」と頭から斬り捨てることはできない。彼女の歯車が狂ってから亡くなるまでの29年間、彼女が愛とそれに基づく幸せな生活を求めていたこと、そして彼女が故郷の筑後川とよく似ている、荒川を見て流していた涙は、真実だったと思うから。
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『嫌われ松子の一生』 山田宗樹著 幻冬社 2003
欲しかったものはただ1つ、愛だった。
小さい頃から重病の妹に両親の愛情を奪われ、両親に目にかけてもらいたくて自分の望みを抑制し、親の望む道を歩んできた。そのようにして得た教師という地位は、自分のクラスの生徒が犯した罪を隠匿しようとしたがために追われることになり、ムラ社会的な地元を飛び出す。
その後、ひょんなことから色々な男性達と深い仲になるが、松子は決して浮気はせず、相手の愛を得るために躍起になる。それは「殴られても平気だ」と言って憚らないところから見ると、依存的なものだったと言っていいだろう。自分が刑務所に入ったときも、恋人が刑務所に入っているときも、松子は「任期を終えた後から始まる幸せな生活」を夢見て耐えてきた。どの相手と過ごしてきたときも、精一杯の愛情を注ぎ、自分も愛の言葉を受けてきた。だからこそ、別れが来た時の松子のショックの大きさは計り知れない。
彼女の人生は、全てが裏目に出てしまう人生だった。信じていた者に裏切られ、死なれ、見捨てられて。53になって刑務所仲間の誘いを受け、廃人のような生活をしていた松子はまた立ち上がろうとしていたがその志半ばで倒れることになってしまった。できれば、もっと幸せな夢を見させてあげたかった。殺されるなんて人生の終わり方、彼女には可哀相すぎる。
彼女の生き方は誉められたものでは決してない。だが、彼女の生き方を「間違っていた」と頭から斬り捨てることはできない。彼女の歯車が狂ってから亡くなるまでの29年間、彼女が愛とそれに基づく幸せな生活を求めていたこと、そして彼女が故郷の筑後川とよく似ている、荒川を見て流していた涙は、真実だったと思うから。
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『嫌われ松子の一生』 山田宗樹著 幻冬社 2003
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