帰省用の本を探していた時にふと目に入る。
「そう言えば、恩田陸は推してる人が多かったかなあ」
と、単純明快な理由で購入。


時が止まったような東北の町、I市の中心に位置する谷津。
この町の高校生の間で、妙な噂が流れた。
「五月一七日、エンドウさんが……」
その日、エンドウさんは姿を消した。
7月には、また似た噂が町を覆う。
金平糖のおまじない、噂、古くからの言い伝え。
信じるものたちは、どうなっていくのか。


読み終えた時、何とも言えない切なさに襲われた。
恐らく、弘範に感情移入してしまったからだと思う。
彼は、「みんなを迎えに来る」という噂を「自分を特別な存在にしてくれる可能性を秘めたもの」と解釈して、行ってしまった。
自分にも、そんな頃があったなぁ、と思う。

「みんなを迎えに来る」という噂は、将来を不安に思っている人達には大きな希望に見えるだろう。
その前に2つの噂が現実のものとなったのだから、なおさら。

どちらかと言うと、地方出身者のほうが内容に深く入り込めるかな、と思う。
地域間の繋がりや、しがらみ等を実感したことがある人のほうが。
後半はややファンタジー気味だが、そこは賛否が分かれるところだと思う。
私には、あの場所が表しているものがいまいちよくわからない。
本来の谷津?新化?あの場所で、変わってしまうことが?

印象に残る点では、脇役までしっかりとキャラが立っていると思う。
登場人物は多いのだけれども、各個人がしっかりと役割を果たしている。
あと、個人的に章タイトルのつけ方が好き。
長いが、その章のとても特徴的な一節なので心に残る。

占いやおまじないのようなものには昔から興味がある。
そして、口コミや間接質問の技法は今年しっかり学んだ。
だからこそ、この話はとても興味深く読めた。
話のテンポもよく、飽きることがない。
この人の作品は、別のも読んでみたいと思う。
早速新刊?の『ねじの回転』をamazonで注文。
届くのが楽しみだ。
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恩田陸著『球形の季節』新潮文庫、1999


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