「本日の商品はこちら!新幹線です!」
深夜の番組の合間にある通販のCMが、俄かに信じがたいことを言った。
最近、新型モデルの登場に伴う車両とダイヤの再編により、
使われなくなった旧型新幹線が売りに出されているとは聞いていたが。
一台限定だったが、先着ではなく抽選にするらしい。
自他共に認める鉄道マニアである私はこの放送に釘付けになり、
次の瞬間には受話器を手にしていた。
そして、私は運良く当選することができた。

数日後、我が家に本当に届いた新幹線。
先頭車両だけだったが、傷や黒ずみが実際に使われていたという
真実味を足す。庭に飾るとそれはとてもいい眺めで、
私は嬉しくてたまらなかった。
しかし、実際に車両を手に入れると、やはりこの感情が湧き起こってきた。
「運転したい」と。昔からの夢だった。
手元には本物の車両が。この思いを止めることはできなかった。
もう疑似体験ゲームでは我慢できない。

翌日から私は貯金の殆どを投げ打って電車を改造し始めた。
燃料タンクを取り付けてガソリンで走れるようにし、
車輪を一般道用のタイヤに付け替え、
操縦桿も運転しやすいように改造した。
家から出やすいように出入り口も広く造り変えた。

改造が終わり、遂に運転する日が来た。
ゲームとは比べ物にならないほどのドキドキを押さえ、道に出た。
他の車の運転手や歩行者が驚いた顔でこちらを見ているのも
心地よい。皆が私に注目しているのだ。
だが、道交法は守らなければならない。車輪を停止線に合わせて止めた。

しかし、思わぬことが起こった。普通の車と比べて、
新幹線は鼻先の分6メートルほど前に余分があるのを私は忘れていた。
そこにトラックが突っ込んできて大事故に繋がってしまったのだ。

警察署で状況を説明しながら、
私は自分のケアレスミスにほとほと呆れ果てていた。

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